今年はインフルエンザが大流行しています。
抗インフルエンザ薬だけでは、症状の改善が十分でない方や副作用のため使いにくい方には漢方薬をおすすめします。漢方薬の麻黄湯(まおうとう)が広く用いられていますが、麻黄湯(まおうとう)にはインフルエンザウイルスの増殖を抑制する効果があり、発熱の日数を短くします。タミフル等インフルエンザ治療薬と併用しても良いことが知られています。また、体温が上がっているのに寒気だけを感じる人には麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、咽の痛みや繰り返し起こる寒気と熱感のある人には桂麻各半湯(けいまかくはんとう:桂枝湯(けいしとう)+麻黄湯)などを用います。高齢者では動悸や排尿障害の副作用があるので、注意が必要です。

11月になり朝夕は冷える日も増えてきました。冷え症に悩まれる方も多くなる時期です。
西洋医学では、冷え症はあまり問題にされませんが、東洋医学では、冷えにより、
気血水の巡りが悪くなり、しもやけ、下痢、こわばり、むくみなど種々の症状が生じると考えられています。
手足の冷えが著しい場合は、
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)、
腹部の冷えには人参湯(にんじんとう)や大建中湯(だいけんちゅうとう)、
こわばりやむくみには真武湯(しんぶとう)、
関節痛が悪化する場合は桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)
生理痛には当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)など症状に応じた冷え症治療薬があります。
冷えにお悩みの方に、漢方はお勧めの治療法です。

9月となり、スポーツには絶好の季節になりました。
しかし、急に歩く量や運動量をふやしたために足腰やからだのあちこちの痛みに悩んでいる方も少なくないと思います。
そのような時に、西洋薬の痛み止めを飲むと胃の痛みやふらつきなどの副作用が生じることも少なくありません。
一方、あまり知られていませんが、関節痛や神経痛は、漢方薬の得意な症状の一つです。
冷え症の方の関節痛やこわばりには桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)、
肩こりや首肩の痛みには葛根湯(かっこんとう)、
関節が腫れて痛む時は越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、
神経痛や腰痛には、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)や
疎経活血湯(そけいかっけつとう)がしばしば効果的です。

7月に入り、暑い日が続きます。熱中症は「熱さに中(あた)る」意味で、暑熱環境下で生じる病気です。
軽症では、筋肉の痙攣から始まり、進行するとめまいや吐き気を生じ、意識障害などに進展します。
予防として、こまめな水分摂取と体調管理が重要です。
また、熱中症までひどくはないものの、夏ばてになりやすい方には、漢方薬の内服が有効です。
夏ばてに用いられる漢方薬として、夏やせや夏まけなどには清暑益気湯(せいしょえっきとう)、
めまいやのどの渇きには五苓散(ごれいさん)
全身倦怠感には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などがあります。

めまいは、内耳や脳出血・脳梗塞などの障害で生じることがあり、十分注意が必要な症状です。
まず、その原因を明らかにすることが重要です。
しかし、原因がはっきりせず、いろいろ治療をうけても良くならない場合は、漢方薬の併用をお勧めします。
漢方の世界では、めまいは「水毒(すいどく)」が原因と考えられています。
めまいの症状に応じて、立ちくらみには苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)
ぐるぐる回るめまいには五苓散(ごれいさん)
フワフワする浮動感には真武湯(しんぶとう)が頻用されます。
めまいでお悩みの方は、一度ご相談下さい。